2023年11月24日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, November, 24, 2023

発表者:堀越洸
Speaker: Ko Horikoshi

タイトル:新規標準物質を用いたレーザーアブレーション-ICP-MS法による定量分析法の開発
Title: Development of a quantitative analysis method using Laser Ablation-ICP-MS with the novel standard material

レーザーアブレーション-ICP-MS法(LA-ICP-MS法)とはレーザーアブレーション法を試料導入法とするICP-MS法である。LA-ICP-MS法は大気圧でサンプリングを行うこと、前処理が簡便という特長より、ルーチンとして定量分析や同位体分析に用いられている(e.g., Gray et al., 1985; Fryer et al., 1993)。LA-ICP-MS法で定量分析や同位体分析を行うためにはマトリックスが同じ標準物質を利用する必要がある(e.g., Leach et al., 1999; Pickhardt et al., 2000)。しかし、一般的に任意の試料に対してマトリックスが同じ標準物質というのは存在しない。

そこで私たちの研究グループは固体試料に貼付して使用する固体標準物質を開発した。この新規固体標準物質を用いることで任意の固体試料に対してマトリックスを揃えた分析が可能である。今回は定量分析を行う上で重要なフィルムの均質性を評価した結果を発表する。

発表者:伊藤 颯
Speaker: Hayate Ito

タイトル:高圧下その場熱容量測定による氷VIの秩序ー無秩序相転移の観察
Titile: Observation of order-disorder phase transition of ice VI by in-situ heat capacity measurement under high pressure

氷には20種類にも及ぶ多様な多形の存在が知られている。この多様性を生み出している一つの要因は酸素間の水素結合中の水素の秩序化にある。ギブス自由エネルギーG =H-TSであるため、同じ酸素結合骨格に対して、高温側ではエントロピー寄与が大きいために水素が確率的に存在している高エントロピーな無秩序相が出現し、低温側ではエンタルピー的に有利な特定の水素位置のみからなる低エントロピーな秩序相が出現する。

氷VIは常温下で液体の水を加圧していったとき0.9 GPaほどで出現する高圧の氷であるが、現在確認されている中で唯一圧力に応じて二つの秩序相(XVとXIX)へと秩序化することが知られている。このVIの秩序化は、有限温度ではエネルギー的に縮退した複数の秩序ドメインが入り混じった部分秩序構造をなしているというモデルが提案されていたり、秩序化温度が低いために有限時間程度では平衡状態にたどり着かないというガラス的な挙動が存在するなど、実験室の温度・時間スケールでは完全な秩序化は達成されないと考えられている。

そこで本研究では高圧下その場熱容量測定装置の開発を行い氷VIの秩序化を観察した。比熱の積分はエンタルピー、(比熱)/(温度)の積分がエントロピーであることから熱容量の大きさを比較できればその秩序化の度合いが定量的に比較可能であると考えられる。

1.75 GPaでの氷VI-XIXの間の秩序・無秩序相転移の速度的な効果を確認できたため本発表では主にそれについて発表する。