2023年12月1日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, December, 1, 2023

発表者: 嶋 健皓
Speaker: Takehiro Shima

タイトル: フラックス法を用いたα-クリストバライト(SiO2)の試料合成
Title: Sample synthesis of α-cristobalite (SiO2) by flux method

トリディマイトは石英に代表されるシリカ(SiO2)多形の一つで、天然では隕石や火山岩に産出する。トリディマイトの安定領域は、大気圧下において867-1470°Cであるが、温度が下がる過程でわずかに原子が変位することで、MC、MX-1、PO-nなど、多くの異なる構造(modification)を持つことが知られている(貫井・中沢、1980)。クリストバライトもシリカ多形の一つであり、天然ではオパールから産出することが知られている。クリストバライトは、大気圧下において1470-1728°Cに安定領域を持ち、この時のmodificationは立方晶系β-クリストバライトである。また、β-クリストバライトを約268°Cに急冷することで、正方晶系準安定相α-クリストバライトが生じる。しかしながら、1050°C以上で熱せられたオパールからα-クリストバライトが生成されることも報告されている(Jones and Segnit, 1971)。また、石英をLi2WO4融液に入れて1000°Cで3日間加熱すると、トリディマイトの複数のmodificationとα-クリストバライトが共存した単結晶が合成される(Nukui and Flörke, 1987)ことや、コロイド状シリカと金属酸化物の水溶液を混ぜて作ったゲルを乾燥させて、900-1200°Cで18-24 hアニールすることでα-クリストバライトが合成される(Thomas et al., 1994)ことが過去には示されている。これらの研究から、トリディマイトの安定領域でα-クリストバライトが生成されていることが分かるが、α-クリストバライトとトリディマイトの温度境界は現状はっきりと分かっていない。
本研究では、アモルファスシリカから直接準安定なα-クリストバライトを合成するための温度とフラックスの条件を検討することを目的に実験を行った。また、4月のセミナーで発表した、単結晶X線構造解析で構造決定が可能な大型のトリディマイト単結晶(100 μm程度)の合成する方法を探ることを目的とした実験についても引き続き行った。フラックス法を用いたトリディマイト及びクリストバライトの合成と、光学顕微鏡、粉末X線回折法による評価について、方法と結果を発表する。

(タイトル・要旨の内容は11月27日時点のものであり、実際の発表と異なる可能性があります)

発表者:森田千歩
Speaker: Chiho Morita

タイトル: 母液の化学組成による非晶質炭酸カルシウムの性質の変化
Title: Changes in properties of amorphous calcium carbonate caused by chemical compositions of mother liquor

代表的なバイオミネラルである炭酸カルシウムには、カルサイト、アラゴナイト、ファーテライトなどの結晶多形、および組成式 CaCO3・nH2O (n<1.5) で表される非晶質炭酸カルシウム(Amorphous Calcium Carbonate: ACC)の存在が知られている。ACCは準安定相のため、高温や高圧、高湿度条件で容易に結晶化する。生体内で結晶多形の前駆体として存在するACCの結晶化挙動の観察は、バイオミネラリゼーションの機構解明に貢献しうる。

Cartwright et al. (2012) やKoga et al. (1998) などにより、同じ非晶質でも異なる性質を示すACCの存在が複数報告されている。本研究では、母液の組成変化によるACC試料の性質の変化に着目し、①室温湿潤、②高温の2条件で結晶化挙動の変化を観察した。

前回のセミナーでは母液のpHを変化させるためにNaOHを添加した結果を報告したが、今セミナーでは他の物質を添加した影響についても観察し、得られた結果について報告する。