Date: 16:00 – 18:00, Friday, December, 8, 2023
発表者:安田 瑛生
Speaker: Akio Yasuda
タイトル:モデル化合物を用いた高圧下における核酸塩基と糖類の反応の検討
Title: Investigation of the reaction of nucleobases with saccharides under high pressure using model compounds
核酸塩基・糖・リン酸が結合したヌクレオチドは、生物の遺伝情報を担うDNAやRNAの基本構成単位であり、生体内のさまざまな代謝にも関与する。前生物学的条件でのヌクレオチドの生成条件を解明することにより、生命の起源の手がかりが得られることが期待される。Kimらは、リボース-1,2-環状リン酸と様々なプリン核酸塩基から、前生物学的条件下でN-9ヌクレオチドを生成し、この反応が2価の金属イオン(Mg2+, Ca2+)によって促進されることを報告した。有機物の反応性は圧力によっても変化する。例えば、常温常圧下でほとんど反応しないリン酸とメタノールのエステル化反応が、6 GPaで進行しジメチルリン酸まで生成することが報告されている。
本研究ではヌクレオチド中の核酸塩基と糖のグリコシド結合に注目し、高圧下での反応性を調べた。まず核酸塩基の基本単位であるピリミジンとヒドロキシ基をもつ単純なモデル物質としてメタノールを、次に核酸塩基の基本単位であるプリンとRNAの構成糖であるリボースを扱い、高圧下での挙動を調べた。
酢酸とメタノールの高圧反応に関する当研究室の先行研究では、反応物が結晶化しないような濃度比・圧力でのみエステル化反応が進行したという報告がされている。ピリミジン-メタノールの混合系では混合溶液を結晶化する直前の圧力(約4.0 GPa)で、室温で長時間静置しラマンスペクトルを測定したが、ピークの出現や消失は見られず反応は確認できなかった。プリン水溶液-リボース水溶液の混合系についても、触媒のCaCl2 aqを加えた条件でIRなどを用いて高圧での反応性を調べた。その結果についていくつか報告する予定である。
発表者:木下 千波矢
Speaker: Chihaya Kinoshita
タイトル:イメージング分析の高速化に向けたレーザーアブレーション装置内セルの開発
Title: Development of a cell in a laser ablation system for faster imaging analysis
レーザーアブレーション法とは,高エネルギーレーザーをサンプルに照射することでエアロゾル化する試料導入法である。LA法は大気圧下でのサンプリング、高速測定や分解能の高さからICP-MS等と接続し,一つのイメージング分析手法として広く用いられている。私たちの研究室では複数のLA装置があり,中でも高速測定に一役買っているのがIridiaと呼ばれる装置である。この装置は、信号の減衰時間が10 msと短く、1つのサンプルの高速測定に長けている。しかし、試料を設置するセルによる影響で、試料交換の際に数時間を要してしまう。
この欠点からIridiaに近い高速性を保ちつつ、サンプル交換で時間を無駄にしない新しいセルを開発するにいたった。今回は、簡易的なセル構造決定までの経緯、初めてセルを使用した結果について報告する。