2024年6月28日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, June 28, 2024

講演者:小松 一生
Speaker: Kazuki KOMATSU

タイトル:Ice VIIに関する五つの未解決問題
Title: Ice VII: five unresolved questions

要旨:
氷には数多くの結晶多形が存在する。ところが、2 GPa以上になるとbcc構造を持つice VII, VIII, Xとfcc構造を持つXVIIIのみとなり、その構造多様性は一見影を潜めたように見える。しかし一見単純に見えるice VIIにも数多くの未解決問題がある。

私はここ10年ほど、氷VIIから氷Xへの水素結合の変化を高圧中性子回折実験から観察するという研究を続けてきたが、今週ようやく論文としてまとめることができた。氷VIIの高圧中性子回折実験については、本セミナーでも数回にわたって紹介してきたので、論文の内容については少しだけ紹介するにとどめ、今回はice VIIについて、どのような未解決問題が残されているか、という点に着目して話を進めたい。特に以下の5つの観点から現在の研究の状況を簡単に紹介する予定である。



1. ice VII からice Xへの変化は相転移なのか?

2. プラスチック相・超イオン相は存在するのか?

3. 不整合相は存在するのか?

4. 20-40 GPa付近で見られるbroadeningの原因は何か?

5. ice VIIを含むdiamondはどのように成長したのか?



講演者:川嶋 大陸
Speaker: Tairiku KAWASHIMA

タイトル:完新世試料の年代測定へ向けたレーザーアブレーションICP-質量分析法の開発
Title: Development of Laser Ablation ICP-Mass Spectrometry for Dating Holocene Samples

要旨:
 地球年代学において現在主流となっている年代測定法は、ジルコンを用いたU–Pb年代測定法である。この手法によっておよそ40億年前から40万年前の試料に関しては年代測定が行われてきたが、40万年より若い試料においては230Thに由来する放射非平衡が無視できないため、Pb/Uのみでは年代測定が正確に行えず、40万年より若い年代領域は地球年代学における空白領域となっている。

 さらに1万年より若い試料を用いて年代測定を行うことを視野にいれると、230Thのほかにも231Paや226Raなどの測定が必要になってくる。しかしこれらの同位体はその存在度が低いことから、測定が困難になっている。卒業研究においては、高感度であるLA-ICP-MSの最適化を行い、そのイオン透過効率を評価したが、標的同位体の測定に際してはさらなる高感度化が必要であると判明した。そのためにはLA-ICP-MSに対する深い理解が必要である。
 今回はLA-ICP-MSのイオン透過効率がイオンごとに違うことに着目し、調査、考察を行ったので、その途中経過について発表する。