2024年5月24日

Date: 16:00-18:00, Friday, May 24, 2024



発表者 : 森田千歩
Speaker : Chiho MORITA

タイトル: 非晶質炭酸カルシウム内の水が圧力誘起結晶化に与える影響
Title: The influence of water in amorphous calcium carbonate on pressure-induced crystallization

炭酸カルシウムには、常温常圧で最も安定なcalcite、高温高圧で再安定なaragonite、準安定相であるvateriteなどの結晶多形の他、非晶質炭酸カルシウム (Amorphous Calcium Carbonate: ACC) の存在が知られている。ACCは組成式 CaCO3・nH2O (n < 1.5) で表される物質で、準安定相であるため、高温、高圧、高湿度などの条件下で容易に結晶化する。特に圧力誘起結晶化の際は0.4 GPa前後で結晶化が始まることが分かっている。
Yoshino et al. (2012) は、ACCの高圧条件結晶化において、ACC内に含まれる水の量と結晶化に要する圧力が負の相関を持つと報告した。またDu et al. (2020) では高圧条件結晶化のメカニズムとして、ACCが膜を作り、その内部で部分的な溶解再析出が起こるモデルを提案した。このように、圧力誘起結晶化においてACCに含まれる水が重要な役割を示すことは明らかだが、結晶化中にH2OがCaCO3に与える影響についての実験的証拠は不足している。
本研究はその実験的証明への一歩として、①ACCのみ、②熱をかけ脱水させたACC、および③吸湿性の高い物質(MgO)と混合したACCの高圧結晶化を、時分割X線回折を用いて観察した。本発表では、この結果とそこから得られる考察を発表する。



発表者 : 大西恵理
Speaker : Eri ONISHI

鉄より重い元素を合成する過程として準静的なs-processと爆発的なr-processが存在する。r-processの起こる箇所として中性子合体 (Freiburghaus et al., 1999) や磁気駆動型の超新星爆発 (Winteler et al., 2012) が挙げられるが、これらのイベントで合成される核種の合成量の計算結果はパラメータ(例: 中性子星の質量: Wanajo et al., 2013, 中性子過剰核の質量、中性子過剰核の半減期:Wu et al. 2016 )によって大きく変動するため物質的証拠であるプレソーラー粒子の分析によってパラメータに制約を与えることが必要になる。
 プレソーラー粒子は同位体組成が太陽系と大きく異なることから発見されるが、本研究ではr-processによる合成量が多く、白金194、白金195、白金196が同程度存在しており白金194、白金195は同重体干渉を受けず白金196の同重体である水銀196は存在割合が0.15 % (Berglund et.al., 2009) と低いため同重体干渉の影響が小さくなるため正確な同位体比測定を行いやすい白金に着目する。本研究の目標は多重検出器型ICP-MS(MC-ICP-MS)を用いて白金同位体比を測定しプレソーラー粒子を発見することである。プレソーラー粒子は隕石中に含まれており隕石からプレソーラー粒子を取り出す方法として酸分解法による耐酸性粒子の単離、抽出 (Amari et al., 1994)が存在する。この方法では酸に溶解する粒子の抽出は不可能であるため白金が濃集している金属粒子の抽出が困難であると考えられる。そのため本研究では隕石からナノ粒子を抽出する方法として液中レーザーアブレーション法(LAL法)(Okabayashi et al., 2011)に着目した。
 卒業研究ではプレソーラー粒子発見の前例 (e.g. Zinner et al., 2005; Amari et al., 2014) が存在するMurchison隕石からLAL法を利用して粒子を抽出し、同位体比が標準と著しく異なる粒子を検出したがこれらの粒子の同位体比が異なる原因は検出器の飽和であると結論付けた。また、抽出した粒子の中に存在割合が0.78 % (Berglund et.al., 2009) である白金192を多く含む粒子が存在しており、これはオスミウムの影響であると結論付けた。本発表ではこれらの結果を踏まえて検出器の感度を落とした状態でのMurchison隕石由来の粒子の測定とMurchison隕石由来の粒子に含まれる白金とオスミウムの比の測定の結果について発表する。