2024年6月7日

Date: 16:00-18:00, Friday, June 7, 2024



発表者:趙 馨雅
Speaker : Zhao XINYA

タイトル:誘電体バリア放電イオン源の定量性評価:アミノ酸が共存する場合のイオン化効率の変化
Title : Ionization Features of DBD Ion Source for Analysis of Amino Acids from Mixtures

 生体内には様々な生体分子や金属元素が存在し、それぞれが機能を担っている。金属元素の役割を通して生体機能を理解しようとする研究分野はメタロミクス(生体金属支援機能科学)とよばれ、この10年間で得られる情報の質と量は飛躍的に向上している。一方で、メタロミクス研究の急速な進歩に伴い、生体中における金属濃度・分布情報だけでは金属と生体分子の関連や金属元素の役割が明確にならず、金属元素と生体分子を同時に分析する必要性が高まってきた。
 レーザーアブレーション試料導入装置を組み合わせたICP-MSでは、主成分からppbレベルの微量金属元素の定量分析が可能である。その一方で、イオン源であるICPはガス温度(運動温度)が8000℃にもなるため、金属元素と相互作用する生体分子の情報(分子量や分子構造に関する情報)は失われてしまっていた。そこで本研究では、レーザー試料導入法の結合が有機分子用ソフトイオン源の開発を行い、高分解能有機質量分析計を組み合わせることでアミノ酸等のイメージング分析を進めてきた。ここでは、誘電体バリア放電(DBD)をイオン源に用い、ソフトなイオン化を実現しているが、それでもフラグメント化が完全に抑制できたわけではない。今までの卒業研究を通じて多くの動物が利用するアミノ酸20種類に対して誘電体バリア放電イオン源の試料導入部の加熱気化温度の最適値とフラグメンテーション様式の評価分析を行った。しかし、大部分の生体試料中に含まれているアミノ酸は複数の種類が存在し、それぞれの分離検出が困難と予想できる。従って、本研究では、異なる比例関係で混合したアミノ酸サンプルの分析を行い、アミノ酸のイオン化効率の変化を調べる。DBDイオン源内でのイオン化のしやすさや抑制効果の有無を調べることで、将来的には信号からアミノ酸の定量情報を引き出せると期待している。



講演者: 末冨 百代
Speaker: Momoyo SUETOMI

タイトル: 石英への加熱及びガンマ線照射による色と分光学的性質の変化
Title: Effects of heating and gamma irradiation on quartz

アメジストはα-石英の一種であり、紫色を呈す。その色は、Siを置換している不純物であるFeに起因するとされているが (Cohen and Hasan, 1974, Cohen, 1975, Cortezão and Blak, 1998, Lehmann, 1975, Rossman, 1994)、電離放射線の影響も必要不可欠である(Balitsky et al., 2000, Hutton and Troup, 1966)。加熱後に脱色することが知られている(Cheng and Guo, 2020, Nunes et al., 2013)。また、黄色を呈するα-石英であるシトリンの色は、O2-+Fe3+↔O-+Fe2+ のcharge transfer に起因するとされている(Stock and Lehmann, 1977)。アメジストはガンマ線照射後に紫外可視吸収スペクトルが変化する一方、シトリンの紫外可視吸収スペクトルにはほとんど変化が見られないという研究がある(Nunes et al., 2013)。
本研究では、シトリンとアメジストが共存しているアメトリンと、シトリンを用い、加熱とガンマ線照射の影響を紫外可視吸収スペクトルにより評価した。また赤外吸収スペクトルにより、加熱及びガンマ線照射による影響を考察した。