2024年10月18日

Date: 16:00-18:00, Friday, October 18, 2024



発表者:伊藤 颯
Speaker: Hayate ITO

タイトル:氷VIの秩序化と圧力の関係
Title: The relationship between pressure and the ordering behavior of ice VI

氷には20種類にも及ぶ多様な多形の存在が知られている。この多様性を生み出している一つの要因は酸素間の水素結合中の水素の秩序化にある。ギブス自由エネルギーG =H-TSであるため、同じ酸素結合骨格に対して、高温側ではエントロピー寄与が大きいために水素が確率的に存在している高エントロピーな無秩序相が出現し、低温側ではエンタルピー的に有利な特定の水素位置のみからなる低エントロピーな秩序相が出現する。
氷VIは常温下で液体の水を加圧していったとき0.9 GPaほどで出現する高圧の氷であるが、現在確認されている中で唯一圧力に応じて二つの秩序相(XVとXIX)へと秩序化することが知られている。このVIの秩序化は、有限温度ではエネルギー的に縮退した複数の秩序ドメインが入り混じった部分秩序構造をなしているというモデルが提案されていたり、秩序化温度が低いために有限時間程度では平衡状態にたどり着かないというガラス的な挙動が存在するなど、実験室の温度・時間スケールでは完全な秩序化は達成されないと考えられている。
本研究では新たに開発した高圧下その場熱測定装置を用いて氷VIの秩序化について測定した。熱容量は秩序化の度合いと直接結びついた量であるとともに他の測定と比較して時間分解能も高いため秩序化の大きさと速度の情報を取得することが可能である。
本発表では圧力に対する秩序化のダイナミクス及び大きさの関係性について議論する。



発表者:栗原 かのこ
Speaker: Kanoko KURIHARA

タイトル:黄鉄鉱の液中レーザーアブレーションにおける粒子生成メカニズムの解明
Title: Elucidation of particle generation mechanism in laser ablation in liquid (LAL) of pyrite

液中レーザーアブレーション(LAL)法は、溶媒中で固体試料にレーザーを照射することにより、微粒子を生成・抽出する方法である(e.g., Mafuné et al., 2000)。高効率で粒子の生成が可能であること(Streubel et al,, 2016)や、従来の化学的方法では生成が困難な準安定粒子も生成できるということ(Santagata et al., 2011)から、近年新しい微粒子の生成法として着目されている。
先行研究ではLALで生成された粒子の粒子形状や平均組成について調べられているが、生成粒子個別の元素組成の大規模な測定は行われていない。しかし、LALにおける粒子生成メカニズムを明らかにするためには、どのような組成の粒子がどのくらいの割合で生成しているかを知ることは重要である。
これまで本研究では、黄鉄鉱を試料に用いてLALを実施し、得られた粒子の個別元素分析を飛行時間型ICP-MS(ICP-TOF-MS)を用いて行ってきた。さらに、LAL試料をイオンクロマトグラフィーICP-MSで分析し、Fe2+イオンが検出されたことから、LALでは粒子だけではなくイオンも生成することを明らかにした。
今回の実験では、LALのメカニズムを知ることを目的として、LALの条件を変化させて生成する粒子の元素組成の比較を行った。変化させた条件は、レーザーの出力、レーザーのパルス幅、用いる溶媒の3つである。発表では、実験で得られた結果から黄鉄鉱のLALで起こる反応について考察を行う。