2024年12月20日

Date: 16:00-18:00, Friday, December 20, 2024



発表者:赤荻 正樹
Speaker: Masaki AKAOGI

タイトル:ポスト・スピネル型AB2O4高圧相
Title: Post-spinel-type AB2O4 high-pressure phases

要旨:
 MgAl2O4などのスピネル型AB2O4化合物の高圧相転移は古くから研究されており、CaFe2O4(CF)型、CaTi2O4(CT)型、CaMn2O4(CM)型と呼ばれる類似した構造を持つポスト・スピネル型高圧相が知られている。これらの相はどれも一次元的な構造を持ち、スピネル型相より10%程度高密度である。高圧地球科学では、下部マントルまで沈み込んだMORBや海洋底堆積物の主要構成鉱物の一つとしてCF型相が知られている。また物質科学においても、ポスト・スピネル型酸化物高圧相はイオン伝導体などの候補物質として関心が寄せられている。最近数年間にCT型高圧相が多くのAB2O4化合物で見出されて、CF型高圧相との構造の違いが明らかにされてきた。今回の発表では、主要なAB2O4化合物のポスト・スピネル転移の高圧相関係を示し、上記の3つのポスト・スピネル型構造の相違について説明する。また地球科学、物質科学で研究されてきたポスト・スピネル型AB2O4化合物の内、構造解析された数多くの物質を取り上げ、A、Bイオン半径とCF、CT、CM型構造との関係について議論する。イオン半径との相関は新規ポスト・スピネル型AB2O4高圧相の構造を予測する上でも有用と考えられる。



発表者:高野 将大
Speaker: Masahiro TAKANO

Title: Reactions of FeS with hydrogen under high-pressure and high-temperature conditions

要旨:
硫化鉄(II)(FeS)は隕石中に普遍的に含まれ、地球型惑星の金属核に含まれる物質の候補として注目されている。FeSの高温高圧相であるFeS IV 相(FeS IV)とV相(FeS V)は水素と反応し、侵入型固溶体FeSHxを形成すると考えられている。これまでに放射光X線回折実験により高温高圧条件で水素化した硫化鉄の単位胞体積の増加と水素化による融点降下[1]が、中性子回折実験によりFeSHxの結晶構造[2]が報告されてきた。一方、単位胞体積が既存の状態方程式[3]と一致していないことや、報告された結晶構造モデル中の重水素の原子変位パラメータとして過剰に大きな値を仮定しているなど、実験データの解釈にいくつかの疑問点が残っている。最近の我々の研究により、鉄と硫黄の混合物から合成した硫化鉄を出発試料として用いて同様の実験を行った場合先行研究で報告されたような水素化による大きな体積膨張は起こらず、出発物質の状態によって水素との反応性が大きく異なる可能性が明らかになってきた。
本発表では、試薬試料と合成試料の水素雰囲気下における体積膨張挙動を観察した実験、および水素雰囲気下における合成試料の融解実験の結果について紹介する。

[1] Y. Shibazaki, et al.: Earth Planet. Sci. Lett., 301(1-2), 153-158 (2011).
[2] S. Abeykoon, et al.: J. Geophys. Res-Sol. Ea., 128(9), e2023JB026710 (2023).
[3] S. Urakawa, et al.: Phys. Earth Planet. In., 143, 469-479 (2023).