2024年12月27日

Date: 16:00-18:00, Friday, December 27, 2024



講演者:大西 恵理
Speaker: Eri ONISHI

タイトル:酸の白金粒子への影響の評価
Title: Evaluation of the effect of the acid on Pt particles

要旨:
 鉄より重い元素を合成する過程として準静的なs-processと爆発的なr-processが存在する。r-processについて、個々のイベントで合成される核種の合成量の計算結果はパラメータ(例: 中性子星の質量: Wanajo et al., 2013, 中性子過剰核の質量、中性子過剰核の半減期:Wu et al. 2016)によって大きく変動する。一方で1回のr-processイベントでの元素合成量を反映していると考えられる古いr-process過剰天体の元素存在量の測定結果は太陽系の値と近しい値を示しており(Roederer IU et al., 2022)、このことからr-processイベントで合成される元素の量には普遍性が存在すると考えられている。r-processイベントで合成される元素にばらつきが存在するか否かをより詳細に、同位体比という観点から検証するために、本研究ではプレソーラー粒子に着目した。
 プレソーラー粒子は同位体組成が太陽系と大きく異なることから発見されるが、本研究ではr-processによる合成量が多く、白金194、白金195、白金196が同程度存在しており白金194、白金195は同重体干渉を受けず白金196の同重体である水銀196は存在割合が0.15% (Berglund et.al., 2009)と低いため同重体干渉の影響が小さくなるため正確な同位体比測定を行いやすい白金に着目する。プレソーラー粒子は隕石中に含まれており隕石からプレソーラー粒子を取り出す方法として酸分解法による耐酸性粒子の単離、抽出(Amari et al., 1994)が存在する。この方法では酸に溶解する粒子の抽出は不可能である。微小な粒子ではバルクと反応性が異なるため、白金粒子が酸分解法の条件に耐えられるかを検証する必要がある。
 本発表では、白金標準ナノ粒子に塩酸を作用させ、塩酸を作用させた場合の粒径や白金の信号強度の変化を比較した結果について発表する。



講演者:吉岡 美香
Speaker: Mika YOSHIOKA

タイトル:蒸発乾固と圧力誘起結晶化に伴うL体過剰アミノ酸水溶液の不斉濃縮の可能性の検討
Title: Possibility of enantiomeric enrichment of L-amino acid excess aqueous solutions by evaporation to dryness and pressure-induced crystallization

要旨:
 生命は約40億年前、地球の原始海洋で誕生したと考えられている。生命が誕生するためには、アミノ酸をはじめとする生体分子が無生物的に合成される必要がある。グリシンを除くほとんどのアミノ酸には不斉炭素原子が存在するため、それらはL体とD体という2種類の鏡像異性体を持つ。無生物的な合成では、通常、L体とD体が等量ずつ生成される。
 しかし、生物圏に存在するアミノ酸の多くはL体である。この偏りは、無生物的合成だけでは説明がつかない重要な課題である。近年では、「宇宙空間でL体アミノ酸がD体アミノ酸よりわずかに多く生成され、そのわずかな過剰が地球上で増幅された結果、生物圏に見られるホモキラリティーが実現した」とする仮説が提唱されている。
 本研究では、このホモキラリティーの実現過程を解明するために、蒸発乾固や圧力誘起結晶化といったプロセスにおいて不斉濃縮が生じる可能性を検討する。

 まず、L-アラニンとD-アラニンの飽和水溶液を10:0, 9:1, 7:3, 5:5の割合で混合し、4種類のアラニン水溶液を作成した。
①蒸発乾固 それぞれの水溶液をスライドガラスに一滴ずつ垂らし、水を蒸発させ、析出した固体をラマン分光法を用いて観察した。L:D=10:0水溶液ではL-アラニンの結晶のみが、 L:D=9:1水溶液ではL-アラニンの結晶と結晶性の悪い固体の存在が確認された。L:D=7:3水溶液ではL-アラニンとDL-アラニンのピークを持つスペクトルが観察された。また、 L:D=5:5水溶液ではDL-アラニンの結晶の存在が確認された。
②圧力誘起結晶化 それぞれの水溶液を約3 GPaまで加圧し、その様子をin situ XRDで観察した。水溶液ごとに、アラニンの結晶化挙動や、加圧によって生成される氷高圧相(ice VI, ice VII)の単位胞体積などが異なることがわかった。また、アラニン結晶の析出挙動には、加圧速度も関係していることも明らかになった。