Date: 16:00-18:00, Friday, January 23, 2025
講演者:鍵 裕之
Speaker: Hiroyuki KAGI
タイトル:ルビー蛍光法による圧力決定における精度の検討
要旨:
ルビー蛍光法はダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧実験における標準的な圧力測定法である。非圧縮率が小さい、氷や有機物に代表される分子結晶の圧縮挙動をX線回折で測定する場合、単位胞体積のみならず低圧領域での圧力の測定精度が結果を大きく左右する。ルビー蛍光での圧力精度は約0.1 GPa程度と言われており、それはルビー蛍光の波長では精度0.04 nmに相当する。これ以上の圧力決定の精度を追求するには、測定環境に起因する誤差要因にも配慮する必要がある。空調を備えた典型的な実験室にみられる1℃以下の温度変動で、ルビー蛍光の波長は0.005 nm変動する。我々はその解決法としてネオン発光線を内部標準として導入する手法を提案し、実験室の温度変動が測定結果に与える影響は無視できるレベルに低減された。このような測定環境を整えた上で、いくつかの球状ルビーの蛍光スペクトルを測定し、スペクトル形状やピーク位置の決定精度について調べたので報告する。
講演者:森 俊哉
Speaker: Toshiya MORI
タイトル:ガラスフィルターを用いたSO2カメラの校正の試み
Title: Evaluation of glass filters for SO2 camera calibration
要旨:
火山噴煙中の二酸化硫黄は、紫外線に感度のあるカメラと、特定の紫外領域のバンドパスフィルター(BPF)を組み合わせたSO2カメラ(Mori and Burton, 2006)で定量的な可視化をすることができる。このSO2カメラを用いると、火山からの二酸化硫黄放出率の変動を秒スケールとらえることができるので、火口直下で発生するVLP(長周期パルス)イベントの規模とガス噴出量の関係の評価(Kazahaya et al., 2011)など、従来の二酸化硫黄測定手法では、なしえなかった観測を可能にしてきた。
SO2カメラを用いた測定では、二酸化硫黄の吸収波長域に感度のあるBPFと吸収波長域外に感度のあるBPFの画像を処理して疑似吸光度画像を生成し、この疑似吸光度を二酸化硫黄カラム量に変換することで、目的とする二酸化硫黄カラム量分布画像を得る。疑似吸光度からカラム量への変換式は、観測条件により変化する。このため、観測中に変換式の校正する必要がある。これまでの校正方法としては、既知量の二酸化硫黄を封入した複数種類のガスセルを観測中に測定することで行う方法(Mori and Burton, 2006)や、紫外分光計測定を平行して実施し、紫外スペクトルから算出した二酸化硫黄カラム量と比較することで校正する方法(Kern
et al., 2010)がある。両手法とも一長一短があるが、前者の手法に関しては、壊れやすいガスセルを観測現場に持ち込み作業することが最大の欠点である。
本研究では、ガスセルを現場で使用しない新しいSO2カメラの校正方法として、大まかな吸収特性が二酸化硫黄の吸収特性に似ているガラスフィルターを利用した方法について検討したので、それについて紹介する。