2018年1月9日

Date: 16.00am-18.00am, Friday, 12 January 2018
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker: Kenji Notsu

日 時:2018年1月12日(金)16:00~18:00
場 所: 化学本館3階講義室
講演者:野津憲治

タイトル: 110年前の「新元素」ニッポニウムの再評価
The rehabilitation of a new element “Nipponium” reported in 1908

要旨:
ニッポニウム(Np)は、今から110年ほど前の1908年に、英国ロンドン大学のRamsayのもとに派遣された小川正孝によってMoとRuの間を埋める(43番)元素として発見が報告された。しかし、追確認ができないまますぐに消え去り、永久に元素名には使えない名前だけが残った。小川正孝はその後も一生涯この新元素を追い続け、特性X線測定の結果、自分が分離した試料は1908年当時未発見の75番元素Reであったことを亡くなる直前の1930年に知った。この結果を本人は発表せず、測定の関係者たちも秘密を守った。小川正孝の死後、ニッポニウムは日本の科学界では誰も語ることのないタブーとなったが、戦後も50年以上経過した1990年代後半になって吉原賢二が再検証に乗り出した。論文調査からReと間違えた可能性を指摘し、さらに小川の遺品からニッポニウムを撮影したX線写真乾板を見つけ、自ら解読した結果Reのピークを見つけた(2003)。小川の再評価の結果、近年出版されている「元素の発見史」のReの項目では、1908年に小川が分離し、1925年にNoddackらにより発見されたと書かれることが多い。しかし2013年になってE,Scerriが吉原の再評価は全く不十分であるとの見解を展開し、元素発見の間違った報告の再評価のあり方に一石投じている。
(セミナーの内容の多くの部分はすでに解説を書いているのでそのファイルを添付します)

参考資料:ニッポニウム