2020年6月12日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, June 12, 2020

日時: 2020年6月12日(金)16:00 – 18:00

Speaker: Sota Niki
講演者: 仁木 創太
タイトル:  LA-ICP-MSを用いたLu–Hf年代測定

Title: Lu-Hf dating with LA-ICP-MS

放射年代の測定対象となる鉱物結晶は,結晶内部の組織ごとに異なる放射年代を持つ場合がある(e.g. Corfu et al., 2003).鉱物内部の異なる放射年代を持つ組織を区別せずに測定した場合,地質イベントとの対応付けが困難な年代値を得ることになってしまう.従って,それを回避する試みがこれまでに研究されており(Krogh, 1982),特に二次イオン質量分析法(Compston et al., 1984)やレーザーアブレーションICP質量分析法(Hirata and Nesbitt, 1995)といった局所分析手法は,鉱物内部のミクロンスケールの組織を区別して年代測定を実施できるので地球年代学において広く普及している.

本研究で着目する年代測定法はLu–Hf年代測定法である.Lu–Hf年代測定法は176Luから176Hfへのβ壊変を利用した放射壊変系列である.Lu–Hf年代測定法は希土類元素に富み,結晶化時にHfをあまり取り込まない燐灰石や柘榴石といった鉱物(e.g. Prowtake and Klemme, 2006; Johnson, 1998)に適用可能な手法であり,変成岩や苦鉄質岩といった岩石から年代情報を抽出する上で重要な測定法である(e.g. Endo et al., 2009; Pochon et al., 2016).

Lu–Hf年代測定法の局所分析法は確立されておらず,それを実現する上で課題が二点存在する.一点目は質量スペクトル干渉である.β壊変系列の親核種と娘核種はほぼ等しい質量数を持つので,質量分解能が数千程度の質量分析計を用いてそれらを測定する場合,親核種と娘核種は質量スペクトル上で互いに干渉し合う.更に176Ybも176Lu及び176Hfと質量スペクトル上で干渉する.結果として,正確な年代測定には元素分離の過程を経る必要があり,従来は溶液手法でのみLu–Hf年代測定は実施されてきた(e.g. Barfod et al., 2003).本研究では試料のイオン化後にイオンとガスとの反応性の差異を利用して質量スペクトル干渉を除去するコリジョン/リアクションセル技術(Tanner et al., 2002; Woods, 2016)を用いることで,試料の溶液化を必要としない測定を可能にする.二点目は同位体分析の感度の不足である.Lu–Hf系列の半減期はおよそ370億年(Scherer et al., 2001)と地球史のタイムスケールと比較して長く,地質試料の鉱物結晶内に蓄積されている放射壊変由来の176Hfはppbレベルであるので,年代測定を実施する上で従来の測定法では同位体分析の感度が不足していた.本研究では,平田研究室で開発されてきた高速多点レーザーアブレーション法(Makino et al., 2019)を採用することにより,鉱物結晶に含まれるppbレベルの同位体を測定することが可能となった.

本発表では高速多点レーザーアブレーションを用いた高感度化とコリジョン/リアクションセル技術による質量スペクトル干渉の除去を利用し,世界で初めてとなるレーザーアブレーション質量分析法を用いたLu–Hf年代測定を報告する.今後,本手法を実用化する上で更なる同位体分析の高感度化や標準試料の確立が必要である.

Speaker: Shotaro Oda
講演者: 織田 翔太郎
タイトル:  L-アラニンの圧力誘起重合反応における出発試料の結晶子サイズと多量体生成量との関係

Title: Relationship between crystallite size of starting sample and yields of multiplier in pressure-induced oligomerization of L-Alanine

アミノ酸の重合反応は、化学進化の重要なステップである。氷天体における化学進化の可能性に着目する我々のグループは、室温高圧条件下でのL-アラニンの圧力誘起重合反応を見出した。先行研究より、この反応はL-アラニンの結晶構造内ではなく、格子欠陥や結晶粒界などで進行したと推察している。もしそうであれば、結晶性の低いL-アラニンを出発試料として用いることで、多量体生成量は増加すると考えられる。そこで本研究は、室温高圧条件下でのL-アラニンの圧力誘起重合反応の出発試料として結晶性の低いL-アラニンを用いることで、多量体生成量が増加するか調べることを目的としている。本セミナーでは、これまで得られた結果および今後の展望について述べる。