2020年7月10日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, July 10, 2020

日時: 2020年7月10日(金)16:00 – 18:00

Speaker: Zhenghao Zhao

講演者:  趙政皓 

Title: The Pressure-Induced Spin Transition of Cobalt Octahedral Complexes

スピン転移は、圧力・温度・光などで誘起する、金属錯体におけるスピン状態の変化である。主にd4からd7までの電子配置を持つ八面体錯体に観察される。スピン状態の変化は物質の色・磁性などの性質や結晶構造などに影響を与えるため、鉱物の形成にも影響すると考えられる。コバルトイオンのスピン状態がコバルト化合物の性質と関連するが、今までの研究は主に大きな有機配位子をもつコバルト錯体を研究していて、天然コバルト化合物のスピン転移に関する研究が少ない。本研究では、コバルトの八面体錯体を持つ、自然界にも存在する結晶体のスピン転移による相転移を研究し、その相転移による性質と構造の変化を明らかにすることを目的にする。今回は、今年の前半で行ったCoSO4·6H2Oを対象にした加圧実験とその分析結果について発表する。


Speaker: Mai Akamune

講演者: 赤宗 舞

タイトル: ナノ粒子元素・同位体分析における非スペクトル干渉の影響評価

Title: Evaluation of the effects of non-spectral interference on elemental analysis of nanoparticles

元素はそれぞれが異なる元素合成過程を持っており、そのうち軽元素(原子番号が鉄までの元素)に関しては合成過程について明らかになってきている。一方で、重元素(原子番号が鉄以降の元素)の一部に関しては超新星爆発や中性子星合体等の環境で合成されると考えられているが、物質的証拠はなく未だ明らかにはなっていない。こうした元素合成環境を制約する物質的証拠の一つにプレソーラーグレインが考えられている。プレソーラーグレインは、原始太陽系星雲で蒸発や凝縮による元素の混合・均質化を免れた粒子であり、その同位体組成から元素の形成環境を制約することができる(e.g., Clayton, 1978)。先行研究では多くのプレソーラーグレインが希ガス及び軽元素の同位体組成によって発見されている(e.g., Zinner 1987)。しかしながら、分析装置の制約により重元素に関する同位体分析の報告は少ない。こうした背景から、本研究ではICP-MSを用いて隕石中の重元素を測定することでプレソーラーグレインを発見し、さらに重元素の元素合成過程に制約を加えることを目指す。ICP-MSで正確な測定結果を得るためには、干渉による影響を適切に補正する必要がある(Vaughan and Horlick, 1986 ; Tan and Horlick, 1987)。干渉は「スペクトル干渉」と「非スペクトル干渉」に大別され、非スペクトル干渉は物理干渉、化学干渉、イオン化干渉、空間電荷効果などを総称していう。重元素分析の場合、多原子イオン等によるスペクトル干渉の影響は軽元素と比べて低く、非スペクトル干渉の影響をより厳密に考慮する必要がある。そこで本実験では、ナノ粒子を計測した際に得られる信号強度に対する非スペクトル干渉の影響を評価した。試料には金ナノ粒子(粒径30 ± 5 nm)と白金ナノ粒子(粒径30 ± 3 nm)を用いた。個数濃度1.0×10⁵ 個/mLの金ナノ粒子懸濁液に、白金ナノ粒子の個数濃度がそれぞれ1.0×10⁴ 個/mL、1.0×10⁵ 個/mL、1.0×10⁶ 個/mL、1.0×10⁷ 個/mL、1.0×10⁸ 個/mLとなるように希釈した。測定には磁場型ICP-MS(Nu Instruments社製AttoM)を用いた。本発表では、実験結果とその考察について紹介する。