2020年7月3日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, July 3, 2020

日時: 2020年7月3日(金)16:00 – 18:00

Speaker: Kazuki Komatsu
講演者: 小松 一生


タイトル: 氷中の水素結合対称化の直接観察に向けて  
Title: Towards direct observation of hydrogen bond symmetrisation in ice


氷には氷Ih, Ic, II-XVIIIまで、実に数多くの多形があるが、その結晶構造が実験的(少なくとも分光学的に)に確認されたもののみがローマ数字付きの正式な結晶相として認定される。氷Xは、氷VIIおよび氷VIIIの高圧相で、水素結合が対称化した状態であることが、分光学的に示差されている。しかし、対称化する圧力はH2Oで60 GPa, D2Oで70 GPaと非常に高く、これまで技術的な困難さから、中性子回折を用いた水素結合対称化の直接観察は行われてこなかった。ここ数年、超高圧下における中性子回折実験を目指して、ナノ多結晶ダイヤモンドをアンビル材に用いた圧力セルを開発してきた。最近、この新たな圧力セルを用いて、82 GPaまでの氷VII (あるいは氷X)の中性子回折パターンの取得に成功した。しかしながら、得られた回折強度は非常に弱く、信頼できる構造解析には今のところ至っていない。本発表では、これまでの圧力セルの開発や、新たな吸収補正の方法、現状の予察的な構造解析の結果を簡単に報告し、今後の方針を議論したい。