2021年11月5日

Date: 17:00 – 18:00, Friday, November 5 2021 

講演者:  丸形 詩歩

Speaker: Shiho Marugata

タイトル: 非晶質炭酸カルシウムを経由したカルサイト格子中へのL-アスパラギン酸の取り込み

Title:  Incorporation of L-aspartic acid into calcite lattice through amorphous calcium carbonate

炭酸カルシウムはバイオミネラルなどとして地球上に普遍的に存在し、カルサイト、アラゴナイト、ファーテライトの3種類の多形をもつ。炭酸カルシウムはこれらの結晶質相に加えて非晶質相が存在する。非晶質炭酸カルシウム(ACC)はバイオミネラルの前駆体として機能し、構造に柔軟性があるため、不純物を取り込みやすい。ACCを経由した結晶化により、本来カルサイトに不適合なSrやBaイオンが高濃度でカルサイト格子中に取り込まれることが報告されている (Matsunuma et al., 2014; Saito et al., 2020)。

生物起源の炭酸カルシウムには有機分子が不純物として含まれ、その取り込み機構が研究されている。Kim et al. (2016) は、L-アスパラギン酸(Asp)を含む炭酸カルシウムの過飽和水溶液から析出させたカルサイト格子中にAspが取り込まれ、単位胞体積が膨張することを報告した。同様の現象がアミノ酸を含むACCを経由して合成したカルサイトでも報告されている (Zou et al., 2020; Sugiyama et al., 2020)。ACCを経由した結晶化により、カルサイト格子中に高濃度のアミノ酸が取り込まれることが期待されるが、先行研究ではアミノ酸の分解温度に比べACCの結晶化温度が高く、カルサイト格子内のアミノ酸の一部は分解されていると考えられる。

そこで、本研究ではACCを経由したAspの熱分解温度以下での結晶化により、高濃度のAspを含むカルサイトの合成を試みた。得られた粉末試料に対して、粉末X線回折、赤外吸収スペクトル、SEM、TG-DTAを測定し、カルサイトの構造変化について調べた