2022年5月6日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, May 6, 2022

発表者:岩野 英樹

講演者 : 名和大輝

Speaker : Hiroki Nawa

タイトル : アルキル置換ブチルジメチルアンモニウムを対カチオンとする[Ni(dmit)2]錯塩の結晶構造Title : Crystal structure of [Ni(dmit)2] complex salt using alkylated butyl dimethyl ammonium as counter anion.


  dmit(2-thioxo-1,3-dithiole-4,5-dithiolate)配位子は、豊富なπ電子を有しており、Niに配位して得られるアニオン性の平面錯体である[Ni(dmit)2]は、対カチオンの違いによって様々な結晶構造の錯塩を形成する。[Ni(dmit)2]錯体は対カチオンを容易に交換できるため、様々な対カチオンを用いた[Ni(dmit)2]錯塩の結晶構造を解析することで、結晶構造を決定する要因を調べる材料として適している。私が所属していた宮村研究室では、アルキル基を有するカチオンを用い、アルキル鎖長の変化によって結晶構造に系統的な変化が生じることを報告してきた。その系統的な変化の1つにアニオン長の半値とカチオン長の大小によって結晶構造に違いが出るという経験則がある(CLCA則, K.Dai, K.Nomoto, S.Ueno, K.Tomono and K.Miyamura, Bull.Chem.Soc.Jpn,2011,84, 312.)。本研究では、対カチオンとして、ブチル基を固定した4級アンモニウムであるブチルジメチルアンモニウムC4Cn(n=1~11)を用いて、結晶構造の鎖長依存性を調査することを目的とした。また、過去の研究で明らかになっており、今回の系と構造が類似している、トリメチルアルキルアンモニウムを対カチオンに用いた[Ni(dmit)2]錯塩(CnTMA系)の結晶構造と比較することにより、結晶構造を決める要因についての考察を行うことを目的とした。 合成した錯塩のうち、n=5の錯塩(C4C5) [Ni(dmit)2] の単結晶を得ることに成功した。(C4C5) [Ni(dmit)2]錯塩の単結晶内には2種類のカチオン分子が含まれていた。本発表では、CnTMA系の結晶構造との比較を通して、n=5の単結晶が2種類のカチオンを含んでいた理由の考察を発表する。


講演者 : 高野 将大

Speaker : Masahiro Takano

タイトル: SmKS波を用いた地震波形インバージョンによる外核最上部構造推定の可能性

  地球の外核は主成分は液体鉄であるが、その密度は純鉄と比較して10%ほど小さい。この密度欠損は外核内に存在する軽元素が原因であると考えられており、軽元素の候補としてはH,C,O,S,Si,Niなどが挙げられているが、その組成比に関しては合意が得られていない。また、外核最上部には地震波の低速度異常が存在することが知られているが、この低速度異常の範囲や大きさはモデルによって大きく異なり、あまり制約できていない。このように、外核最上部は地球化学的にも地震学的にも未解明な部分が残された領域となっている。

コア-マントル境界でm-1回反射するS波はSmKS波と呼ばれ、外核最上部を通過することから、外核最上部の情報を多くサンプリングしており、この波を構造推定に用いることでコア最上部の構造をより強く制約することが可能になると期待される。本発表では、地震波形そのものをデータとして用いる地震波形インバージョンという手法によるSmKS波を用いた外核構造推定の可能性について紹介する。