2022年7月15日

Date: 16:30 – 18:30, Friday, July, 15, 2022

発表者 : 三島 修 (NIMS)

Speaker : Osamu Mishima (NIMS)

タイトル : 水の体積:水の密度極大と液液臨界点

「水は、なぜ4℃で密度が極大になるのか?」 この疑問は、現在、水の液液臨界点仮説によって説明されている。水は冷やされると氷の結晶になるが、液体の状態を保ったまま冷やすこともできる。液液臨界点仮説によれば、過冷却状態の水は、低温・高圧下で密度の異なる二つの液相に相分離する。この相分離が始まる圧力と温度を液液臨界点と呼ぶ。一気圧で水の温度を下げると、水は高密度状態から低密度状態に徐々に変化し、これが水の密度極大の原因である。この仮説は多くの実験、理論、シミュレーションで支持されているが、過冷却水は結晶化しやすいため、実験は困難である。水の相分離は、実験的に厳密には証明されていない。

本発表では、水の密度極大の位置と液液臨界点の位置を議論する。前半では、液液臨界点仮説を紹介し、低温高圧下で過冷却水の体積を測定した実験について紹介する。発表の後半では、水の圧力、温度、体積の関係を多項式で近似し、この多項式を用いて水の密度極大の圧力と温度を推定する。さらに、水の密度極大と液液臨界点の関係を考察し、臨界点の圧力がおよそ150 MPa以下であることを推定する。

一般に、結晶やガラスは、過冷却液体から発生する。多くの鉱物もマグマの過冷却状態から結晶化し始める。液体の状態に種類があれば、そこから生じる結晶も異なることが予想される。過冷却液体の相図は今後の研究課題かもしれない。