2022年9月30日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, September, 30, 2022

発表者:村岡賢佑

Speaker: Kensuke Muraoka

タイトル:非晶質炭酸カルシウム(ACC)の湿潤条件での結晶化における多形制御の試み

Title: Attempts to control polymorphism in crystallization of amorphous calcium carbonate (ACC) under humidity conditions

炭酸カルシウムは生体鉱物として普遍的に地球上に存在し、主に常温常圧で安定相のカルサイト、高温高圧で安定相のアラゴナイト、準安定相のファーテライトの3つの多形を持つ。これらの結晶多形に加えて非晶質炭酸カルシウム(ACC: amorphous calcium carbonate, Chemical formula: CaCO3・nH2O, n<1.5)が存在する。ACCは生体鉱物の前駆体として働き、また容易に結晶化する。ACCを加熱すると350℃付近でカルサイトに結晶化し、加圧すると1 GPa未満でカルサイトやファーテライトに結晶化することが報告されている(Kojima et al., 1993; Yoshino et al., 2012)。また、湿潤条件下でACCを結晶化させた場合、60%以上の湿度条件でカルサイトやファーテライトが生成したという報告がある(Xu et al., 2016)。このようにACCからカルサイトやファーテライトの生成は容易である一方で、ACCからアラゴナイトの生成は困難であり、報告も限定的である。水溶液を介したアラゴナイトの生成に関しては、例えば、ACC粒子をエタノールに分散させ、塩化マグネシウム水溶液を加えて震盪してアラゴナイトが生成した報告がある(Zhang et al., 2012)。

 そこで本研究では、ACCからの固相反応で得られる炭酸カルシウム結晶の多形制御を目標とする。ACCを異なる温度・湿度条件下に置いて結晶化を行い、生成した炭酸カルシウムの多形を調べた。ACCを結晶化させる際にアラゴナイトの生成を促進するブチルアミンを添加物として加えて、加えずに結晶化した場合と比較した。ACCは、氷冷した塩化カルシウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を混合した過飽和溶液から合成した。得られた結晶相は粉末X線回折を用いて決定した。本発表ではその結果を報告する。

発表者:栗原かのこ

Speaker: Kanoko Kurihara

タイトル:微粒子分析に向けた分割型リアクションセル最適化の試み

Title: Optimization of Segmented Reaction Cell for particle analysis

ミクロンサイズ以下の微粒子は、その大きな比表面積により、バルク物質とは異なる特異的な性質をもつことが知られており(Guisbiers et al., 2011)、身の回りの様々な材料に広く活用されている。近年、半導体の汚染の評価や、環境中や隕石中の微粒子の起源解明などの目的で、微粒子個別の元素組成情報・サイズ情報に対する分析要請が高まっている。そこで本研究ではICP質量分析法(ICP-MS)を用いた微粒子個別の高感度かつ迅速な元素分析法の開発を試みた。
本研究では、微粒子に由来する過渡的な信号からほぼすべての元素を同時検出することができる飛行時間型ICP-MS(ICP-TOF-MS)に着目した。ICP-TOF-MSでは、大気やプラズマに由来する膨大な数のイオンが共存するため、イオン透過効率の低下、検出器への過負荷が問題となる。本研究で用いるICP-TOF-MS(Nu Instruments製 Vitesse)では、イオンの除去機構としてSegmented Reaction Cell(SRC)(Javahery et al., 1997) が備えられている。SRCでは、コリジョンガスとしてヘリウム、水素のガスを用いるとともに、セグメント方式により電極間に電位勾配をかけることで分析元素イオンの透過効率を改善している。SRCでは分析用途に合わせて操作条件を最適化する必要がある。
今回は、個別微粒子の全元素分析を目標にSRCの印加電圧の最適化を図った。初めに、感度について電圧の最適化を行い、その後感度を落とさずに粒子の信号持続時間が小さくなるよう再度最適化を行った。さらに、SRCにおける電位勾配の効果を確かめるため、通常のコリジョンセルを模擬した電圧との比較を行った。本発表では装置の詳細と電圧の最適化の実際を紹介する。