2023年6月30日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, June, 30, 2023

発表者: 小林 大輝
Speaker: Hiroki Kobayashi

Title: Sequentially “synthesising” families of metal clusters by applying pressure

学部の授業で一度は原子間距離rを横軸にとったエネルギーダイアグラムを目にしたことがあるだろう。原子間距離の伸縮は、電子構造を変化させるもっとも基本的な方法といえる。しかし、「化学的」な方法では原子間距離を連続的に変えることはできない。また、冷却によって発光などの挙動が変化する系は先行研究があるが、温度変化による原子間距離の変化は非常に小さい。では、代わりに圧力というツールは使えないだろうか? GPaオーダーの圧力をかければ、冷却では絶対に実現できないような、極めて短い結合を連続的に作れる。そのように「ほんの少しずつ幾何構造(そして、電子構造)の異なる物質のfamily」を作り出して調べれば、原子間/分子間相互作用や電子状態に関する、これまでにないまったく新しい視点の知見が得られないだろうか? たとえば、幾何構造がどのように電子構造を変化させるのか、きれいに統一的に説明できる方法が見つけられないだろうか? 今回は最近扱っているNHC保護金属クラスターの圧力応答についての結果を報告する。

発表者: 高野将大
Speaker: Masahiro Takano

Title: Neutron diffraction measurements and molecular dynamics simulations on FeS hydrides

Abstract:水素は高温高圧条件下で鉄の結晶格子間サイトに侵入し、水素化鉄FeHxを形成することが知られている(e.g., Fukai et al., 1984)。水素化鉄の単位胞体積は単位胞中の水素量に比例して増加し、その比例係数は水素誘起体積膨張係数ΔVHと呼ばれる。これまでに、鉄水素化物中の水素安定位置と水素誘起体積膨張係数に関する議論が多く行われてきた(e.g., Machida et al., 2014)。
一方、鉄と硫黄の化合物であるFeSの高温高圧相であるFeS Vも鉄と同様に高温高圧条件下で水素化しうることがX線回折によるその場観察実験により示されている(Shibazaki et al., 2011)。しかし、FeS V中の水素安定位置と水素誘起体積膨張係数は決定されておらず、FeS V中の水素溶存量の上限は鉄の水素誘起体積膨張係数を用いて推定されている。本研究は、①FeS V中の水素安定位置、②FeS Vの水素誘起体積膨張係数、③水素溶存量の上限の3つを、中性子回折によるその場観察実験と第一原理計算をはじめとした数値シミュレーションを併用して明らかにすることを目的としている。今回の発表では、本年度5月に実施した中性子回折によるその場観察実験と、水素化FeS Vの分子動力学シミュレーションの結果について報告する。