2021年7月2日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, July 2, 2021

講演者:  丸形 詩歩

Speaker: Shiho Marugata

タイトル: 非晶質炭酸カルシウムを経由したカルサイト格子中へのアミノ酸の取り込み

Title:  Incorporation of amino acid into calcite lattice through amorphous calcium carbonate

炭酸カルシウムはバイオミネラルなどとして地球上に普遍的に存在し、カルサイト、アラゴナイト、ファーテライトの3種類の多形がある。炭酸カルシウムはこれらの結晶質相に加えて非晶質相が存在する。非晶質炭酸カルシウム (ACC) はバイオミネラルの前駆体として機能しており、高圧もしくは高温条件下で容易に結晶化する。また、ACCは非晶質相であることから構造に柔軟性があり、不純物を取り込みやすいと考えられている。

生物起源のカルサイトはMgイオンなどの無機イオンや有機分子を不純物として含んでいることがわかっており、これまでカルサイト格子中への不純物の取り込みについて研究が行われてきた。カルサイトへの無機イオンの取り込みについては、ACCを経由した結晶化により、本来はカルサイトに不適合なイオン半径の大きいイオンを高濃度取り込んだカルサイト構造の炭酸塩を合成できることが報告された (Matsunuma et al., 2014; Saito et al., 2020)。有機分子の取り込みについても同様に、ACCを経由した結晶化により、カルサイト格子中への高濃度のアミノ酸の取り込みが期待される。アミノ酸を含むACCの加熱結晶化を行った先行研究はいくつかあるが (Zou et al., 2020; Sugiyama et al., 2020)、アミノ酸の分解温度に比べACCの結晶化温度が高く、結晶内のアミノ酸が分解されているため、ACCを経由した高濃度のアミノ酸を含むカルサイトについての先行研究はない。

そこで、本研究ではアミノ酸を含むACCの結晶化の実験条件を検討し、高濃度のアミノ酸を含むカルサイトの合成を試みた。また、カルサイト格子中へのアミノ酸の取り込みに伴うカルサイトの構造変化についても調べた。今回の発表ではこれらの実験結果と考察について議論する。