2022年5月20日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, May 13, 2022

タイトル:レーザーアブレーションと質量分析計を用いた元素・有機化合物の同時イメージング分析法の開発

Title: Simultaneous imaging analyses of elements and molecules using laser ablation-atmospheric pressure plasma-based mass spectrometry

講演者:クー フィーシン

Speaker: Hui Hsin Khoo

 生体内の微量金属元素は生理機能の維持に重要である。特に微量金属元素は生体分子と結合しているものが多く、さらなる生理機能の解明には、生体分子の情報も必要不可欠である。よって、金属元素と生体分子を高感度かつ定量的に可視化できるイメージング分析法が求められている。

 レーザーアブレーション–誘導体結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS法)およびマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS法)は、それぞれ固体試料中の元素と有機物の二次分布を高感度で可視化できる分析手法として注目されている(Becker et al., 2014; Matusch et al., 2012)。LA-ICP-MS法とMALDI-MS法を用いたイメージング分析の先行研究では、生体組織の連続切片を作成し別の切片をそれぞれ分析している(Bianga et al., 2014)。別の切片を分析している場合,元素と有機物の分布は完全一致とならず,マイクロメートルスケール以下の高い分解能での議論では信頼性に欠けてしまう。さらに,元素と有機物の情報を得るためには分析時間に長時間を要してしまうなど、分析上の課題が多く残されている。課題解決のために、同一試料から元素と有機物情報を取得可能な分析技術が求められている。こうした背景により、本研究ではレーザーアブレーション法と組み合わせる可能な有機物のためのイオン源の開発と、一つの試料から同時に元素・有機物の同時イメージング分析法の開発を目指す。

 まず、レーザーアブレーション法と組み合わせることが可能な有機物分析用のイオン源を開発した。イオン源は大気圧誘電体バリア放電(DBDI)により非平衡プラズマを用いている(Khoo et al., 2022)。有機物の検出を確認後,元素と有機物の情報を同時に取得した。Y字管を用いて、レーザー装置(ST Japan社製Jupiter Solid Nebulizer)から生成したエアロゾルを二分岐させ、一方はICP-MS(元素分析:Thermo Fisher Scientific社製iCAP TQ)、他方を独自に開発したイオン源を搭載した質量分析計(有機物分析:Sciex社製Qtrap 5500)へ導入した。イメージング分析が可能かを確認するために、元素・有機物含有の模擬試料を作成した。本発表では、分析装置の詳細と結果、そしてイメージングデータを紹介する。